
どうも、長野の看護師有罪判決について、未だにとてもショックを受けています。と、同時に疑問に思って事故の経緯と背景を調べました。
今回の記事では長野県民医連 学習資料を参考にしています。
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事故が起こったあずみの里は長野県にある特別養護老人ホームです。入所者の定員は65名で、ABCの3チームに分かれており、事故はCチーム(定員 27 名 )で起こりました。
Cチームでは午後3時からおやつの時間で、実際に食堂に集まったのは17名でした。(おそらく、空き部屋や、寝たきり、胃ろうの方の関係でこの人数になったのかと推察します。)
事故は2013年の12月12日の午後3時過ぎに発生。集まっていた17名の利用者に、本来は2名の介護士がおやつと飲み物を提供する予定でしたが、一人は排泄介助とその処理のために遅れていました。
もう一人の介護士が一人でおやつの配膳を始めていたところに、今回被告とされている准看護師の山口さんが「手伝うことはないか?」と申し出ておやつ配りの手伝いを行いました。
各利用者がおやつを楽しんでいましたが、85歳の利用者Kさんがぐったりしていることに後から入ってきた介護士(排泄介助を行っていた)が気づきました。
異変に気付いた職員たちは救急処置を行い、119番通報。病院へ搬送されましたが意識の戻らないまま、事故から約一か月後の2014年1月16日に病院で死亡。
そして事故から約1年後の2014年12月26日に山口さんは在宅起訴されました。
こちらは弁護団が現場を再現して、当日の人員の動きを図にしたものです。
見づらい写真で申し訳ないですが、「出典」からPDFを参照されると詳細に確認できます。

山口被告は食事介助が必要な利用者さんの対応を行っており、亡くなった利用者Kさんに背を向けていました。Kさんのすぐ左隣りで座っていたのです。
長野県民医連の話によれば、その時いた17名のうち、食事全介助が2名、一部介助が2名、13人は食事自立。しかし、そのうち8名は移動してしまうなど注意が必要な利用者だったそうです。
今回亡くなったKさんも自立の利用者として捉えられており、特別注視をするべき対象ではなかったのです。
とはいえ、「食事を口に詰め込む癖」が見られるなど、注意が必要な利用者であったことは確かです。
そうは言っても、注意の不要な利用者などほぼ存在しませんし、すべてを見ていることはできません。なにより山口さんは目前の全介助の利用者さんの嚥下(飲み込み)状態を確実に確認しながら介助を行う必要がありました。
Kさんの「癖」として食事を詰め込むような、食べることを急いでしまう特徴がありました。実際に嘔吐もされたことがあったとのこと。
そのため、食べ急ぎによる消化不良の可能性があるため、おやつをゼリーに変更してみようと介護士の会議で決まりました。事故の1週間前のことです。
しかし、長野県民医連の公表する資料を調べると、あるジャーナリストの記事が掲載されています。
この記者は、利用者Kさんが入所してから実際に食べたおやつの一覧記録を確認しています。
出典: 創作(つく)られる冤罪 あずみの里<業務上過失致死>事件 (※PDF)
ホットケーキ、フレンチトースト、おやき、今川焼 、蒸しパン、ロールケーキ、バウムクーヘンなどが多く並び、むしろプリンやゼリー系のものの方が少ない。現に、異変の前々日にもフレンチトースト、その前日にはバウムクーヘン、そして 11 月 30 日 (異変の 12 日前 )にもドーナツを食べているが、何の支障もなかった。
強調部は筆者による。
いや、ちょっと待てよ。これが間違いでないなら、会議で決まった「ゼリーへの変更」が実行されていなかったということになる。
で、あれば普段はおやつの介助に入らない看護師が適切な形態の食事を提供することは尚更不可能ですよね。
いつものように、ドーナツを提供し、横で他の方の食事介助をしていただけだということです。なのに、業務上過失致死…現場の介護士の誰もがその罪に問われる可能性があった、ということになる。
今回の事故について業務上の過失があるとして、山口さんは在宅起訴されました。
当初の起訴の理由としては「注意義務を怠った」ということでした。つまり、食事介助に気を取られ、亡くなったKさんへ注意を払わなかったということです。
わかります、言いたいことは。不可能ですよね、全部を見ることは。
ここから、検察は訴因を追加してきます。
(素人の推察ですが、検察も自身の訴因に無理があると理解したのかもれません。実際に、地裁判決ではこの第一の訴因である注意義務違反については、被告に過失は無いと述べています。)
追加された2つの訴因によって有罪とされます。
- おやつの形態を確認する義務を怠った
- 窒息はドーナツによって発生した
裁判の公判がかなり進んでから、検察は上記を「被告の過失だ」と言い出したのです。
検察の「絶対に有罪にする」という意地が見えてきませんか?
波乱を呼ぶ起訴を行い、民医連が完全にバックに付き弁護団が形成され、45万人の署名が集まった裁判で「無罪」の判決がでることをとても恐れていたように感じました。
検察のメンツとでも言うのでしょうか。日本の刑事裁判は99.9%有罪になることで有名です。起訴したからには有罪にしないと恥をかく文化があるのかもしれません。
そして、地裁では有罪判決。罰金20万円という、なんとも微妙な結果になりました。
さらに判決文でも 、
「間食の形態を容易に確認できる職場の体制になっておらず、責任がすべて被告にあるとは言い難いことも考慮する必要もある」
と述べ、「じゃあ、なぜ山口看護師だけが罪を負うの?」という理解のできない結果になりました。
裁判官さん、検察に気を使ってないか?
SmartFlashさんの記事➡「有罪率99%」の秘密…かつては裁判官と検察官の癒着も
被告が控訴したことにより、これからは高裁にて裁判が続きます。無罪判決が出ることを願っています。
以上、自分が調べた内容を紹介してきました。正直、被告側の主張ばかりに偏ってしまった感はあります。公平さを欠くとは思いますが、介護現場の一人としての情報として捉えていただければ、と思います。
今回の事故は、誰が被告になってもおかしくない話だと感じています。
会議で食事形態を変更しても、ミスでそれまで出していた形で提供してしまうことも実際にあります。言い訳にしかならないですが、日々利用者さんの状態は変化していてすべてを完全に把握し続けることは不可能に近いのです。
今回の事故を教訓に、脳で覚えることには限界があることを認識し、視覚的に情報を得られるような環境を整備する必要性を感じました。
例えば、
- 机に食事形態を貼り付ける
- トロミの量を一覧表にしておく
- 注意が必要な利用者さんが一目でわかるような目印
など、初めて来た人が見ても分かるような取り組みを進めていこうと思います。
同時に現状の安全第一に過ぎる介護への疑問も記事にしています。
>>>【特養おやつ死亡事故】安全は大事だけど、幸せな生活を送ってもらいたいよねっていう話。
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