【介護施設での虐待】改善には職員教育ではなく「ゆとり」が必要という話。

生理的欲求が満たされない労働環境が虐待の原因

どうも、またまた夜勤で仮眠わずか30分…ド田舎介護士の森まる(@820life)でございます。

前回、ナースコール多すぎ問題の話をしたわけですが、睡眠や食事がまともに取れない労働環境って人間の精神にかなり悪影響を及ぼすよな…と思ったわけです。

介護施設での虐待件数が過去最大になったと報道されていますが、その一因に過酷な労働環境があることと、なぜその環境が虐待につながるのかということを『マズローの欲求階層説』を取り入れながら説明していきます。

そして虐待が起こらない環境を作るためには、職員の教育やストレスマネジメントだけでなく、労働環境の改善こそが最も重要な対策であるということを解説します。

マズローの欲求階層説とは

今回の意見の裏付けとして『マズローの欲求階層説』を使用するので、そちらの説明を簡単に行います。

欲求にはレベルがある

基本的な考えとしては、下層の欲求が満たされると次なるレベルの欲求を満たすために活動を行っていくということです。

図で見ると分かりやすいので貼っておきます。

マズローの欲求階層説。生理的から自己実現まで5段階に欲求を分別した図。

それぞれの欲求レベルの説明はググった方が早いと思うので今回は割愛。重要なのは「生理的欲求」がもっとも基本的な欲求であるということです。

生理的欲求が満たされないとどうなるか?

冒頭でお話しした、「寝たい・食べたい」といった最も基本的な欲求が「生理的欲求」にあたります。

この基本的な欲求が満たされないとどうなるか?

たとえば、貧しい国で食べ物がない人たち。

盗んだり、強盗したりと犯罪を犯してでも食べ物を確保しようとするのではないでしょうか?

それは善悪ではなく、生きるために必要な行動ですよね。

では、仕事に疲れてくたくたで帰宅。「これからやっと眠れる」という時に妨げになるモノ・コトがあればどうするでしょうか。

原因となるものを排除しようとしませんか?

・鳴り続けるスマホをサイレントにする。
・騒音を出す人が居れば文句を言いに行く。

こんな感じで、なんらかの行動を起こすのではないでしょうか。これもまた善悪ではなく、自分の欲求を満たすために必要な行動を本能的に行います。

生理的欲求が満たされない労働環境

ワンオペ夜勤では1人で数十名の利用者さんへ対応する必要があります。途切れることのない呼び出しや、センサー反応への対応、巡回やオムツの交換など仮眠もゆっくりと取ることができません。

場合によっては落ち着いてトイレに行ったり、食事も食べることができない日もあるでしょう。

そんな状況はまさに、時限的に生理的欲求が侵されている状況ではないでしょうか。

1時間、2時間ならなんとか乗り越えることができても、17時間も続くとなると、正常な判断ができなくなり、本能的に邪魔するものを排除しようとする行動へ出てしまうのも心理学的に見れば自然なこと。

実際に施設での虐待が多く発生するのは夜勤の時間帯です。

理性的に善悪の判断を行うことができない状況を作り出してしまっている労働環境こそが、虐待の本質的な原因なのです。

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でも、それが介護の仕事じゃないか

そんな意見も理解できます。

私たちはお年寄りのケアをして「ありがとう」と言っていただけることで、やりがいを感じます。今までできなかったことが、できるようになった時に大きな喜びも感じます。

そして、それで給料を頂くこともできるし素直に「いい仕事」だと思います。

ですが、なかには暴力をふるって利用者さんを殺してしまう介護士もいるわけです。

その原因は労働環境にこそあると訴えたいのです。

「ストレスマネジメント」とか、「認知症への理解」が必要であると叫ばれていますが、そういったものは以前に比べると格段に深まっているはずです。

にもかかわらず、なぜ下図のように虐待の件数が増え続けるのか。

高齢者の虐待件数が増加している。平成29年度は510件。
出典:厚生労働省 「平成29年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
に基づく対応状況等に関する調査結果」から

高齢者の数自体も増えていますが、”考え方”とか”精神論”での対応に大きな効果がないということを、このデータが示唆していると思います。

今以上に人手が必要になる基準を作ってしまうと、介護施設が運営できなくなるという厚労省の考えも理解できます。

しかし、国が本気で虐待を減らそうと思うのであれば人員の配置と労働環境の改善こそが最も優先して取り組まなくてはならないことである、と現場のいち介護士として思うのです。

さらに、他者への暴力という方法を取らなかったとしても、職員自身の心の病という結果に終わることも福祉業界では多いのです。

介護職の精神障害労災支給件数
出典:厚生労働省 「平成29年度過労死等の労災補償状況」から抜粋

こんな状態では安心で豊かな老後なんて支えられなくて当たり前です。

国や厚労省は、働きやすい環境づくりを本気でやっていただきたいと思います。

“運営ありき”ではなく利用者も、働く人も、みんながゆとりをもって笑顔で過ごせる環境作りましょうよ。

「ゆとり」を持って笑顔で働きたい

そんなわけで、虐待の背景には人間の最下層レベルである「生理的欲求」が侵され、理性的な判断ができない状況が生まれていることを解説してきました。

介護職員の教育不足や、感情のコントロール不足が原因ではなく「ゆとり」のない労働環境が虐待の本質的な原因であると伝われば幸いです。

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