利用者転倒で介護施設に損害賠償命令【現場無視】

アビーロードの転倒・死亡事故で2800万円の賠償命令

日々利用者さんの安全第一でピリピリしている介護現場。そんななかで、またまた介護の現場を無視したかのような判決が出ましたね。

まずは京都新聞さんから記事を引用させていただきます。

京都市山科区の介護老人保健施設「アビイロードやましな」の入居者男性=当時(82)=が、職員の介助不足により複数回転倒して死亡したとして、遺族が施設を運営する医療法人「稲門会」(左京区)に約4800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が31日、京都地裁であった。島崎邦彦裁判長は、職員の介助義務違反があったとして同法人に約2800万円の支払いを命じた。

島崎裁判長は、男性が重度の認知症を患っており、転倒のリスクが高いと指摘。施設に入所後、約20日間で3回転倒していたとして、2回目以降の転倒は「頭部を直接床に打ち付け、重大な結果を生じさせる危険が極めて高い状態にあった」と認定した。その上で、男性が歩行する際に職員が付き添い、介助していれば死亡に至る転倒を防げたとした。

出典:京都新聞
※強調は筆者

裁判官の方たちは現場がどのような状態なのかご存知ないのでしょうか?

個人的には、この種の判決が出るたびに「介護の仕事ってムリゲーだよね…」という気持ちが強くなっていきます。

あ、興奮しすぎて申し遅れました。ド田舎介護士の森まる(@820life)です。

今回の記事は現場の介護士視点から、なぜ転倒が起こるのかを説明します。そして、現場を無視した判決が続くと介護難民を増加させる結果になるということをお話ししていきます。

すべての転倒を防ぐことは現実的に不可能

そもそも、転倒は防ぎきれません。

なぜか?

身体拘束が禁止されているからです。利用者さんの行動の自由を制限することは許されていません。いくら認知症で自身の状態が理解できない方であってもです。

そんな方が何人もいらっしゃる現場であっても、職員の数は限られています。日中でも介護士1人で利用者さん10人以上の見守りが必要なこともあります。

同時に利用者さんが動き出せば、全員をケアすることはできません。

「座っててください」という言葉さえもスピーチロック(言葉による行動の制限)と言われ、あまり大きな声で言うこともできない状態なのです。

かといって、その方の意思を尊重して付き添いを行うと他の方の見守りができないという状態。

なので、介護施設においてすべての転倒を防ぐことは不可能なのです。

損害賠償請求が当たり前になる介護業界

介護事業者に対する訴訟は増加傾向です。最近ではおやつを誤って配った看護師に刑事罰が下された話もありました。

あまり言いたくもないですが、このような訴訟が当たり前になっていけば「介護の当たり屋」のような事例も出てくることが考えられます。

つまり、転倒リスクが大きい方を施設に入れて、事故が起これば示談や訴訟に持って行く。あるいは、そのような入れ知恵を背後で行って家族をコントロールするといったことも出てくると思います。

その時も司法がいままでの判例に従い施設に賠償命令を出し続ければ、将来的に日本の介護と社会に大きな悪影響を及ぼすことが想定できます。

介護難民の増加=介護離職の増加

・厚労省が現実に合ったルールに変えていかない
・司法が現場の状況を踏まえた判決を出さない

こんなことが続いていけば、高齢者を受け入れる施設側も慎重に判断せざるを得ないことになります。

訴訟リスクと施設のイメージダウンを考えれば自然な流れですよね。

転倒リスクが大きい方や徘徊のある方は受け入れを拒否し、寝た切りの方を選んで入所させる。これはすでに始まっていることです。

その結果、介護サービスを受けたくても受け入れてもらえる施設がない。家で介護するしかなくなると、今度は現役世代の介護離職が増加してしまいます。

日本の経済全体にとっても負のダメージしかないわけです。

裁判官・官僚は介護現場で研修すべき

いち介護士が偉そうに言うことではないかと思います。ですが、介護に関する決まりを作る官僚の方や、裁定を行う裁判官の方たちには介護現場での研修を実践して頂きたい。

数分の「視察」ではなく、丸一日リアルな現場を見ていただきたい。そうすれば、いかにルールが現実に合っていないのか理解してもらえると思います。

介護保険制度の創設から約20年。そろそろ現実と理想の隙間を埋める作業を行う時期に来ていると多くの現場の人間は考えています。

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